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<<第6回 丸子あゆみ、法廷へ!? >>










丸子あゆみ、法廷へ!?

なんともショッキングなタイトルですが、べつに罪を犯したわけでも被害者になったわけでも、突然弁護士にキャリア変更したわけでもありません。実はボランティアで簡単な通訳をたのまれたのです。

依頼人はコナでいつもお世話になっている、カフェ経営者のAさん。味のある、とても魅力的な方で、隠れファン多し。私はよくナイトダイブに連れていってもらうのですが、定休日もなく朝早くからお店を開け、ダイビングに行くときは午後にカフェを閉めて夜八時からダイビング。それで翌朝いつものように早くから開店の準備を始めるのですからほんとうにタフな方です。私など潜った翌日は疲れきってしまって、ほとんど使いものにならないというのに。どこからくるのでしょう、あのエネルギー……。

Aさんのカフェは桟橋近くの海を臨む絶好のロケーションにあり、コーヒーを片手にぼんやり海や船を見つめて過ごす昼下がりはなんともいえない贅沢な時間。ラーメンや冷やし中華などの日本食もおいしいし、フィッシュ&チップスやバーガー類もいけます。散歩の途中に立ち寄ったりすると、居心地がよくて、つい長居をしてしまうのです。

本題に戻りますが、そのAさんのご自宅に空き巣が入ってしまいました。昨年のアイアンマンレース(トライアスロンレース)が終わったあとで、10月終わりごろのこと。仕事を終えて、Aさんご一家と日本からのご友人が食事に出かけた隙に起きた事件でした。被害はお友だちのバッグに入っていた数十ドルとAさんのズボンやTシャツ。それにティーンエイジャーのお嬢さんの下着!

変態のしわざとしか思えませんが、白人ローカルの容疑者はドラッグを服用していたそうです。何軒も空き巣を働いていた常習犯で、Aさん宅の窃盗がきっかけでついに逮捕されました。まぬけなことにこの泥棒、なんと盗みに入ったAさん宅から母親に電話していたのです。徒歩で空き巣をはたらいたので、戦利品の山にありつけたものの持ちかえるのに困ったというわけ。そこで母親に電話して車で迎えにきてもらったというのですから、あきれてものも言えません。Aさんが電話をリダイヤルしたところ、容疑者の母親につながり、そこからアシがついたのです。

さて裁判所に到着した私たちは、手荷物のX線検査を受けてから指示された部屋へ向かいました。廊下には弁護士や証人とおぼしき人々が椅子に座って話しています。部屋の手前で日系人のおばさん(裁判所付きの秘書といったところでしょうか)に呼びとめられ、以下の手順を説明されました。

1.陪審員の前でAさんに被害状況についての検事の質問に応答してもらう。
2.それを聞いた陪審員は容疑者が有罪になる証拠が認められるかどうか話し合う。
3.証拠が認められた場合、容疑者に事実確認をし、容疑を認めない場合は起訴し、裁判にかける。

次に担当の検事が現れ、具体的にどんな質問をするかAさんと私に簡単に説明すると、呼ばれるまで待つように告げて部屋に戻っていきました。アメリカの法律ドラマに出てくるような法廷を想像していたのですが、いざ呼ばれて部屋に入ると、二十畳ほどの会議室の中央に会議用のテーブルが置かれているだけ(裁判≠ナはなかったわけですから当然といえば当然なのですが、ついつい期待してしまいました)。そのまわりに二十人弱の陪審員が窮屈そうに座り、Aさんと私を無言で見つめてきます。部屋の隅の小さなデスクには男性のタイピストが。

Aさんも私も、しばしヘビににらまれたカエルのような状態に。ハワイのぬるま湯に浸かっていた私の身も心も一瞬にして(一瞬だけ?)引き締まりました。後ろめたいことなどないのに、不思議と緊張してしまって。車を運転中にパトカーとすれちがうときのかすかな緊張にすこし似ていたかもしれません。

まず私が通訳としてすべて真実を伝えると右手をあげて宣誓し、そのあとAさんも真実を述べると宣誓して着席。その後、検事がAさんの名前、名前の綴り、住所や家族構成などの質問をしてから、いよいよ事件当日の話へ。Aさんが帰宅したとき、飼っているイヌたちの様子がおかしかったこと。室内に入ると物が散乱していて、友人の現金とAさんの洋服、それに娘さんの下着が無くなっていたこと。逆に不審なものとして、容疑者のものらしい、男物の花柄の短パンが残されていたこと(ということは、容疑者はAさんのズボンをはいて帰ったらしいのです……!)。某(容疑者の名前)という人物に自宅に入っていいという許可を与えたかなどという質問がなされ、約十五分ですべて終了。この間、ご自分で十分に英語を話されるAさんはほとんど私の通訳なしで応答なさっていました。

部屋を出て廊下で数分待機していると、陪審員により証拠が確認されたと検事からの報告がありました。しばらくすると、ブルーの上下に身をつつみ、両手両足に鎖をつけられた二十代後半の白人男性が件の部屋に連れられていきました。おそらく空き巣の容疑者であろうその人物は目がうつろでいかにも危険人物といった風体。本人を目の前にするとさすがに気味悪く、事件発生時にAさんやご家族が在宅されていなくてよかったとつくづく思いました。ほんとうにそれだけは不幸中の幸いです。

裁判所での一件は実に興味深い経験でしたが、できることなら犯罪を身近に感じることのない環境に暮らしたいものです。ハワイ、とくにビッグアイランドは田舎なので治安は悪くないほうですが、最近は人口の増加に連れて犯罪も増えているようです。車の運転にしても、たとえば、わりこみをさせないと銃を向けられたりすることもあるという物騒な話も聞きました。都会を離れ、やすらぎを求めてこの島に来る人々が多いなか、ほんとうに残念な話です。

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