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<<第5回 ワイピオ渓谷とクジラ >>










冬のハワイといえば、ずばりクジラ。友達に会っても「もうクジラは見た?」というのが時候の挨拶になるほど、この季節はクジラ一色になります。私も先日、おそまきながら今シーズン初のクジラを見てきました。

ホエール・ウォッチングツアーに参加すれば、ほぼ間違いなく遭遇するようですが、このシーズンだと岸からでも十分クジラの姿を目にすることができます。ハワイ島北西部のサウス・コハラ・リゾートエリアのビーチからでも、ずっと海を見ているとクジラが見えるそうです。今回は島北部のワイピオ渓谷でクジラを見たという話を小耳にはさんだので、ドライブもかね、久しぶりにワイピオまで足をのばすことに。

ワイピオへは、私の住むコナから車で一時間半ほどかかります。ワイピオの手前、ホノカアという町のテックス・ドライブ・イン≠ナ揚げパンマラサダス≠購入(またまた、食べものの話で恐縮ですが)。アンドーナツのような姿ですが、中に隠れているのはバヴァリアン・クリーム(ババロア味のクリーム)やハワイ風にパイナップルとパパイヤのミックスジャム(これがけっこういける)、それにストロベリージャムなど。フィリングなしのプレーンもそれはそれで素朴な味わいが楽しめます。ひとつ、1ドルほど。今回はプレーンとクリーム、パイナップル・パパイヤをひとつずつ買って、いざワイピオ渓谷へ。

ホノカアから240号線を西へ15分ほど走ると突き当たりになりますが、そこがワイピオ渓谷を見下ろす展望台。1.6キロほど向こうには緑に覆われた、切り立つ崖がそびえ、その手前、展望台から約300メートル下には黒砂海岸が広がり、打ちつける波で海岸線が白く縁取られています。

ワイピオ渓谷はいくつもの滝に囲まれ、その滝が流れ込むワイピオ川のおかげで古くから肥沃な土地だったようです。アボカド、バナナ、ココナツ、パッションフルーツ、グレープフルーツ、グァバ、レモン、ライム、コーヒーなど様々な熱帯のフルーツが自生し、絶えず水の流れる湿地はハワイアンの主食であるタロイモの栽培にも適しているようです。野生のブタもワイピオ産になると、ひとまわり大きいと言われているとか。かつて、島全体が飢饉に襲われたときも、ワイピオの食糧で難を免れたというのですから、ほんとうに豊かな土地なのでしょう。古くから王族などが埋葬された地としても有名で、ここの黒砂海岸には黄泉の国への入口があるという伝説もあるらしく、とても神秘的な雰囲気に包まれています。

四輪駆動車でないと入れない、勾配のきつい坂道を10分ほど下りると、木々がまばらな黒砂海岸に到達します。浜に立つと、左右には滝の流れ落ちる崖がそびえ、海を背にすると、霞みながらも光をたたえた幻想的な谷が姿を現します。ここに来るたびに、不思議と厳かな気分なってしまいます(ちなみにアメリカ人とインドネシア人の友人カップルは、かつてここで結婚式を挙げました)。

さて、今回の目的はクジラだったわけですが、ビーチに車をとめて海に目をやるやいなや、波打ち際に潮吹きを発見! まさに目と鼻の先ほどの近さ。おぉっ!と声を上げると、察知されてしまったのでしょうか。その後すこし沖に行ってしまいましたが、それでもずっと湾内にとどまっていました。マラサダスとおにぎり、それにポット入りの熱いコーヒーを楽しみながら観察すること二時間、定期的に複数の潮吹きや尾の一部が見え隠れしていました。

ワイピオの壮大な崖をバックに豪快なクジラのジャンプのショットを!とカメラを手にねばりましたが、二時間程度でそんなシーンに出会えるはずもなく……。結果はレンズにばっちり潮がついてしまっただけ。それでも十分楽しめたクジラ日和だったのです。

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