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<<第16回 夢はかなう>>










小さいころから抱いていた夢のひとつが、ここハワイ島でかないました。以前、そう書いたことがありますが、今回は詳しくその話をしてみます。

幼いころ、私にはふたつの夢がありました。ひとつは翻訳を仕事にすること。幼稚園に通っていたときから絵本が大好きで、小学生にもなると文字どおり本の虫になった私は、親が与える書物だけでは飽きたらず、ともだちの家に行っては彼らと遊ぶのもそこそこに、そのお宅にある児童書をかたっぱしから読破して、おとなたちの失笑を買っていました。

「ぐりとぐら」や「ももいろのきりん」を経て「エルマーの冒険」シリーズやE.ファージョンの童話集に手を染めたころから海外、とくに英語圏の童話のとりこになっていきました。聞いたこともないカタカナの固有名詞や、珍しいお菓子、竜の子どもや神話の神々など不思議な動物やキャラクターに心を奪われ、いつしか本に関わる仕事、できれば外国の書物を訳す仕事をしたいと漠然と思い始めていたようです。

そんな幼少時の夢は気づいていたら現実のものになっていました。

長年抱いていたもうひとつの夢は馬でした。幼いころからなぜか馬という動物に惹かれつづけていた私は、馬が頻繁に登場するという理由でテレビ放映される西部劇は見逃さず、動物園に行けば係のおじさんが引くポニーに乗ることを至上の喜びとしていたのです。小学生の頃など、「将来は北海道の牧場主と結婚したい」と真剣に思っていたほど。

大学時代はバイトをしながら学外の乗馬クラブに通って馬に親しんでいました。日本の都市部で馬を所有するには乗馬クラブの馬を購入し、クラブに預けるのが一般的ですが、馬そのものの購入代金が高額なだけでなく、月々の管理費もかさむので、自分の馬を持つのは夢のまた夢でした。

ここハワイ島にはパーカー牧場という、個人所有のものでは世界最大の規模を誇る牧場をはじめとして多くの牧場があり、馬の姿を目にするのは珍しいことではありません。ハワイ島で過ごすようになってからは何度か乗馬を楽しむこともありました。

そんなあるとき、友人に誘われ日系人の牧師さんのお宅におじゃまする機会に恵まれました。なんでもその方は近くの牧草地を借りて馬を飼っていらっしゃるとのこと。馬に目がない私はさっそく見せてもらうことに。その馬は灰色のアラブ種で、まだ三歳ほどの若駒でした。小さめの顔に大きくつぶらな瞳。まだ成長しきっていない華奢な骨格。とても品のある馬です。初対面の私がブラシをかけてもおとなしく気持ちよさそうにしていたのが印象的でした。それがタロー≠ニの出会いでした。

その出会いから数ヵ月後、件の牧師さん一家が急遽ホノルルに引っ越すことになりました。ホノルルで馬を飼うことはできず、泣く泣くタローを手放さなくてはならないといいます。どうせなら面識があり、タローを可愛がってくれるひとに譲りたいということで私に声をかけてくださいました。それも日本では考えられないくらい格安で。しかし、私はハワイを留守にすることもあるので、その間の世話を考え躊躇したのですが、常時タローを預かってくれる牧場が見つかり、問題は解決されました。

こうして長年の夢はかない、今では時間を見つけてはタローに乗りにいくという日々を楽しんでいます。たった一度の出会いが夢をかなえるきっかけになるとは、つくづく不思議なものですが、これもハワイに根付く、目に見えない大きな力が手を貸してくれたのかと思わざるを得ません。もっとも、夢というのはどこであろうとも、あきらめずに抱きつづけるかぎり、かなうものなのかもしれませんね。

ところで、みなさんの夢はなんですか。

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