| <<第12回 スペンサー・パークのクジラ Vol.2>> | |
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カパアウ、ハヴィからの帰路、クジラに出会った私は270号線を南下し、カワイハエ近くのサミュエル・スペンサー・ビーチパークで車のエンジンを切った。 実はここを訪れたのは初めてだったのだが、これが実にすばらしいビーチだと判明。駐車場から浜辺を眺めると、大樹がねそべるようにビーチの入り口に横たわっている。明るいベージュ色の砂浜は大きすぎず小さすぎず手ごろなサイズだし、波がほとんどない静かな海。 浮き輪をつけていれば子どもたちでも入ることができる。まるでプールのようだ。大木の木陰に陣取り、シーツを広げてその上に手足をのばして横になる。読みかけだった、パウロ・コエーリョの『ヴァルキリース』のページを繰る。たちまち私の心は本の舞台である、カリフォルニアの砂漠に引きずり出された。木陰の快適さと時おり頬をなでるそよ風に、ページを繰るスピードが速まる。 しばらくすると、砂漠の暑さがこちらまで伝わってきて、水が恋しくなる。そっと海水に足をつけると、ひんやりした感触に包まれた。それでも前に進むと、次第に水温と体温の間の温度差がなくなっていく。海底から足を離すと、ゆっくり仰向けになり、優しいうねりに身も心もゆだねてみる。 目に入るのは真っ青な空と、ところどころにぽっかり浮かぶ白い雲だけ。穏やかな水の音が聞こえてくるが、これは果たして海のつむぎだす音なのか、それとも波間に揺れる私の内なるささやきなのだろうか。 海との一体感を満喫すると、浜に上がり、傾きかけた太陽に水滴のしたたる体をさらした。じりじりと照りつけるハワイの太陽が、カフェオレ色に焼けた私の肌に、さらにブラウンの色をのせていく。 体が完全に乾くと再び本に手を伸ばす。前半はあまり動きのなかったストーリーも、後半になると一気に盛り上がってくる。すっかり夢中になって読みふけり、最後まで読み終えたとき、すでに太陽は水平線の上に位置していた。ここまでくると、大きく燃える太陽が水平線に触れるまではあっという間だ。ビーチに集まるひとびとが見守るなか、太陽はその色彩を空や海に残しながら、一秒ごとに海の向こうに沈んでいった。 浜にいるひとびとは圧倒的な自然の美しさに言葉を失っている。この聖なる時間に、互いに知らぬ者どうしが感謝の気持ちでひとつになる。 そのときだ。「ごらん、クジラだよ!」家族を連れた若い父親が、夕日の余韻でばら色に輝く沖を指差した。視線を移すと、次の瞬間、体をわずかに片方に傾けたクジラが大きく水面から跳ね上がった。続けてもう一回、水平線の方角に向けてジャンプ。あちらこちらから歓声があがる。私は慌ててデジカメのシャッターを押したが、被写体が遠すぎてうまく写らない。残念。 それにしても、夕日が沈んだ直後、すべてのひとの注意が水平線に向けられているときに、あれほど豪快なジャンプを見せてくれるとは、なんとサービス精神旺盛なクジラだろう。単なる偶然とはとても思えない、神秘的な一瞬だった。 |
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