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<<第11回 スペンサー・パークのクジラ Vol.1 >>










またまたクジラのお話。
久しぶりにハワイ島北部を訪れた。最北部の町ハヴィを東へすこし進むと、カメハメハ大王生誕の地カパアウがある。そこでオリジナルのカメハメハ大王像を拝んでから、その先のポロル展望台にてポロルヴァレーを眺めに行った(ちなみにこの谷は以前紹介したワイピオの反対側に位置する)。切り立った崖をファインダーにおさめ、数回シャッターを切った。いつもの壮大な景色に息をのみながら海を見つめていると、なにもない海面が反射して、遠くにいる私の目に光がとびこんでくる。なんだろう。すると次の瞬間にクジラの潮吹きが。その日、初めてのクジラとの対面だった。

次の目的地は名前こそ知らないけれど、以前偶然に見つけて気に入っている場所。キングカメハメハを横目にハヴィ方向に戻る途中、ストリート名もない未舗装の道を海側に入っていく。すぐに道がつきあたり、左へ折れるとその道だけでも来たかいがありそうな美しい道に出る。両脇の木が鬱蒼としげり、道の上にアーチを作っていて、真昼の日差しがすばらしい木漏れ日をつくりだしている。自然のアーチを抜けると右に道がでてきてそこを入ってくのだが、その道の悪いことといったら。まずたいていのひとは腰がひけるだろう。

土の道なのだが、雨が多いせいだろうか、わだちがとても深い。もっとも深いところで50センチはあるだろう。すぐにジープを4WDに切り替える。道幅は車一台がギリギリ通れる程度。両側にはびっしりと天然のリリコイ(パッションフルーツ)の木が群生しており、自由にのびたしなやかな枝が無邪気に、しかし執拗に車に手をのばしてくる。ジープには窓をつけていないので、うっかりすると顔に傷がつくことになる。道路の右側は牧場で、左側には民家が点在している。

そのうちまた右に道が現れる。前回はそちらに入っていったのだが、牛の群れに阻まれ泣く泣く戻った。今回は運良く牛もいなく、その先のすばらしいシークレットビーチにも到達することができた。もときた道へ戻り、先ほど行かなかった方角へ。しばらく悪路を行くと、海に臨む林に着く。入り口には車はここに駐車するようにというサインが立てられている。また、ここはカメハメハ大王がかつて戦いの神にささげたヘイアウ(ヘイアウ)であると記したサインもある。

車を降りて林の中に入っていく。とても静かな雰囲気。すぐに林は消え、赤土の平らな土地に出る。ここは崖の上で、目の前の海は深い色をたたえて大きくうねっている。右手の端まで歩いていくと、10メートルほど下にまた陸があり、洞窟があるのが見える。前回来たときは、そこになんと全裸のカップルが座ってじっと海を見つめながらなにやら話していたのだが、今回はだれもいない。下に降りるためのロープがあるのだが、行ってみたいという夫をひとり行かせ、私は赤土の平地の上に腰を下ろした。

ほかにひともなく、耳に入ってくるのは海の音だけ。そこが聖なる地であるからなのか、心身ともにリラックスしていくのがわかる。崖下を見ると夫が楽しそうに岩場を観察している。大地にどっしり腰をおろした私はいつのまにか目をつぶり、ひとりきりの静かな時間を楽しんだ。どれくらい経っただろうか、なにかを感じて目を開けてみる。すると、わぁっ、陸からかなり近いところで中型のクジラが背中を海面から出し、沈んだかと思うとテールをしっかり大気に突き出した。

あわてて夫にクジラ、クジラ!とさけんだが、遠くにいる彼には聞こえるよしもない。その後じっと海面を見つめたが、クジラは次第に沖へと遠ざかっていった。
(続きはまた次回に)

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