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| <<第24回 楓の木の大地から>> | |
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7/11/2006 バンクーバー お昼前にバンクーバー空港に到着。天気はくもり。 予約していたレンタカーを借りに、さっそくAlamoのカウンターへ。シルバーのJeep Libertyが用意されていてごきげん。一度乗ってみたかったのだ、この車。乗ってみると、サイズが小さいのか大きいのかはっきりしない微妙さはあるものの、街中も走りやすい。ハワイでは開放感あるジープ君(愛車のJeep Wrangler)の方が断然はまるんだけど、都会ならLiberty もいいかも。 空港からダウンタウンへ向かうグランヴィル通りは、あいかわらずのろのろだが、おかげで両側に建ち並ぶお屋敷群をじっくりとながめながら道を行くことができた。いずれも歴史を感じさせる堂々とした構えの邸宅ばかり。広々とした庭に面したテラスでお茶を飲むなんて、気持ちいいだろうなー。この辺りは高級住宅街である。どんな人たちが住んでいるのだろう。 橋を渡り、ダウンタウンへ。去年も泊まったSPにチェックイン。機内での映画三昧がたたって睡魔に襲われるも、ここで寝てしまうと時差ぼけになってしまうと、身体にムチ打って街へ繰り出す。 とりあえず、昼食でも取って目を覚まそうとホテル近くの目抜き通り、ロブソンストリートへ向かう。 この通りは、ZARAとかGAPとかROOTSとか、若者が好きそうなファッションの店がひととおりそろっていて、スターバーックスも何件もあるし、こじゃれたレストランも建ち並ぶ、まあ日本でいえば表参道のような通り。観光客の姿も少なくない。眠い目をこすりながらも身体をならすために、夫と二人でひたすら道を歩く。本当ならショップもバンバンのぞきたいところだが、その元気もない。 ファーストフードとか、ウエスタンな食事はしたくなかったので、適当にタイレストランに入る。大好物のトムヤムクンとパッタイを注文する。夫はこれまた彼の大好きなパドガパウという、ポークと野菜をガーリックで炒めバジルであえた料理とコッカニーというカナダのビールをオーダーする。 このコッカニー、氷河から作られるビールで、本当においしいのだ。すきっとキレがよく、さわやかで、まるで氷河のかけらが舌の上でとけていくよう。日本では見かけないので、今回久しぶりに飲めるのを楽しみにしてきたのだ。ただ、ここで飲んでしまうと、ホテルまで帰れるかわからないくらい眠いので、わたしは夫のたのんだコッカニーをちょっとなめる程度にしておく。それでもやっぱり、うーん、んまい! 料理のほうは、正直どうということもなかったが、夫がビールを2本飲むのにつきあい、のんびりと食事をする。わたしたち以外には、白人の二人連れが一組と、タイ人の男性客がひとりいるきり。ウエートレスのお姉さんも、もう店じまいの作業に入っているという感じでのんびりやっている。わたしは道行く人たちをぼんやりながめる。 くもりということもあって、バンクーバーの気温は日本にくらべてかなり低い。長袖のシャツ一枚では寒いくらいだ。カナダの面白いところって、歩いている人たちのファッションの季節感がまったく統一されていないところ。タンクトップで歩いているブロンドのお姉さんがいると思えば、厚手のコートを着込んだお兄さんもいる、というかんじだ。 でもこれは日本以外の国はそうなのかも。たしかイタリアでもそうだった。Tシャツ一枚の人もいれば、革のジャケットとブーツで防寒している人もいたしな。日本では、まず考えられない絵だろう。夏服と冬服の人が道ですれ違うなんて。なんといっても、わが国では衣替えの時期が決まっている。これはもしかしたら、外国人から見ると、すごーく不思議なことなのかもしれない……。 食事を終えたわたしたちは、ホテルに戻り、結局睡魔に抵抗できずにベッドに倒れこむ。7時すぎに起きだして、また食事。ほとんど動いていないのに、なんだかおなかがすいている。遠くまで行くのは面倒だということで、ホテルの向かいにあるタイレストラン(!)へ。 おいおい、いくらタイ料理好きでも、バンクーバーくんだりまで来て、二食つづけてタイ食べなくても……。 でも食べたのだ。しっかりと。またまたトムヤムクンと(夫はすっぱいといって食べないので、一人分のボウルをたのむ)、エビのすり身揚げ、そしてシーフードのカレー炒め。もちろん、コッカニーも。バンクーバー初日の夜に乾杯してグラスに口をつける。 舌に乗ったのは、コッカニーらしからぬ芳醇な味わい。コッカニーって、もっとさわやかですっきりしているはずじゃ……。でもボトルのラベルを見ても正真正銘コッカニー。昼間夫が飲んだものとおんなじラベル。おいしいんだけど、慣れないコクがあって不思議。まあ、いいや。料理はとってもおいしいから、満足、満足。 なんでもここは、タイの王族も訪れるお店とか。なるほど店内の雰囲気もしっとりと落ち着いているし、ウエートレスのお姉さんたちも愛想がいい。この店にしてよかったな。 と、気をよくしたのも会計のときまで。請求書を見てみると、すでに15%のチップが上乗せされているではないの。ハワイでもよくあることだが、こちらが観光客と見ると、勝手に請求書にチップをつけられていることがある。そもそもチップとは客側がサーバーのサービスに感謝して払うもので、一方的に店側から決められるたぐいのものではない。サービスに不満なら少なくするし、逆にとても満足するならいくら払ってもいいのだ。それを、観光客だからと勝手にチップを乗せてくるとは不届きな。 一瞬、チッと思ったが、まあ、バンクーバー最初の夜だ。それに料理もおいしかったし、ま、いいか。と、いわれるままに15%のチップ込みの請求書にサインをして、店のお姉さんに渡す。彼女は会計担当なのか、わたしたちのテーブルを担当してくれたウエートレスさんではなかった。 立ち去りかけて請求書のサインに目をやったお姉さん、あろうことか「チップが入っていませんが……」とのたまうではないか。確かに、客がチップを書き入れる欄は空白だ。だって、そっちがすでにチップ込みの額を請求しているのだから。お姉さんにそのことを説明すると、「あら、そうですね」と言って、涼しい顔で立ち去る……。 あらそうですねって、いったい……? ほかに言うことがあるんじゃないの……。ふつうならマネージャーにクレームをつけるところだが、すっかり疲れきっていてすぐにでも寝たいので、ホテルに帰ってベッドに直行。腹立ちも眠気には勝てなかった。 |
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7/11/2006 太平洋上 気がつくと、バンクーバー行きのJALのシートにすわっていた。ほんの1週間前には、よもや自分がカナダに飛ぶなどとは、想像だにしていなかったのだから驚きだ。 私の旅はこんなふうにして始まることが多い。 6月はいろいろなことが持ち上がって、気分的に参っていた。とどめとして、28日には実家で13年も飼っていたゴールデン・リトリバーのカブが亡くなった。家族のだれもが、どこかでそのことを予感していたとはいえ、それでもやっぱりカブの死は突然に思えたし、わたしたちは想像以上の悲しみに襲われた。 朝起きれば無意識のうちに「カブちゃんの調子はどう?」と父に訊いてしまうし、夕方になれば、「そろそろカブちゃんの散歩行く?」と夫に訊いている。 なによりも寂しいのは外出から帰ってきたときだ。玄関の前で飼われていたカブは、誰が帰ってきても、真っ先に出迎えてくれていた。 駐車場に停めた車の窓から玄関を見ると、いつもカブがのびをしたり、尻尾をふったりして私たちを待ち構えていたものだ。言葉こそ交わすことはなかったけれど、カブには私たちの言葉は100パーセントわかっていたし、もちろん私たちの気持ちとなれば、それこそ手に取るようにわかっていただろう。 それなのに、私たちは、はたしてカブの気持ちのどれほどをわかっていてやれたのだろうか。そう思うと、胸がふさがる。 そんなやるせない気持ちと、じめじめまとわりつく梅雨の空気がうっとうしくなって、さわやかな気分を味わいたくなった。 気分がスッとするところといえば、カナダ! とくに友人がいるウィスラーは空気が澄んでいて水もきれい、見上げる山のいただきには一年中とけることのない氷河がのぞめる。 想像するだけで涼やかな気分になるではないか! というわけで、数日後、わたしはJALのシートにもたれていた。 甘ったるい味付けの牛肉とジャガイモの煮物がメインの機内食を食べ終えると、わたしは機内で見られる映画をチェックした。いつからだろう。ひとりひとりにスクリーンが用意され、自分の好きな映画を選べるようになったのは。7、8本用意されている映画は、話題のものや、先行上映されているものもあり、結局2本のつもりが3本くらい見てしまう。おかげでほとんど寝ないで目的地に着くことも最近ではめずらしくない。 それ以前のフライトは、ほとんどの時間を睡眠に当てていたので、到着後がらくだったのに……。でもわたしは時差ぼけにそれほど悩まされるたちではないので、フライトで好きな映画が楽しめるのはうれしい。 今回もまた2本鑑賞する。クィーン・ラティファ主演の『Last Holiday』とトミー・リー・ジョーンズ主演・監督で、昨年のカンヌ国際映画祭で最優秀男優賞と最優秀脚本賞を受賞した『メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬』。 前作は大手小売チェーンのキッチン用品売り場で働く、自分に自信のない店員が、医師の誤診で余命わずかと診断され、人生最後にと憧れの高級リゾートで休暇を取るうちに、前向きで自信に満ちた人間に生まれ変わるという内容。「人間、死ぬ気になれば、なんでもできる」ということか。先が見えすぎるのが難点かもしれないストーリー。 二作目はなかなか見ごたえのある映画だった。男の約束を描いた映画だが、「因果応報」が根底に流れる深いテーマの映画だと思う。グロテスクで滑稽で美しく枯れている。そんな感じを抱かせる映画。 男は愚かなほどロマンを追い求め、女はひたすら現実的。その対称的な構図がくっきりと浮き彫りにされている。 友情に生きるトミー・リー・ジョーンズはもちろんかっこよかったが、一番いかしていたのはダイナーのママ、レイチェル役のメリッサ・レオ。かっこよかったなー。この役は、酸いも甘いもかみわけた大人の女性にしか演じることはできないだろう。日本の女優ならさしずめ桃井かおりか、かたせ梨乃あたりか。中年のこういうカッコイイ女性に、わたしはひたすら憧れてしまう。 |
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